話題

 

6月末から7月始めにかけて、ちょっと気になったショービズの話題を3つ。


SAG Awards: The Devil Wears Prada Cast REUNION! - Entertainment Tonight, US 2024

Emily Blunt, Meryl Streep, and Anne Hathaway.
The 30th Annual Screen Actors Guild Awards
Phot: Chris Pizzello / SAG-AFTRA

①映画「プラダを着た悪魔」続編がクランクイン

昨年のSAGアワードで映画「プラダを着た悪魔」の三人が久しぶりに揃い、劇中の台詞を引用した会話もあって話題になった。

今迄に何度も出てきた続編待望論。でも、映画会社も役者たちも毎回「絶対にない」と繰り返すばかりで、SAGの時も「続編はありえません」というニュアンスだった。オレも、元々やめた方がいい派だったし、それでいいと思っていた。

ところが、名物編集長アナ・ウィンターが辞任してニュースになった数日後。なんと今月に入って「プラダを着た悪魔」の続編がクランクイン、これを20世紀スタジオが公式に認めたのである。

途端に続編告知のトレーラーが出てきたので緘口令が敷かれていたんだろう。前作と同じデビッド・フランケル監督で、役者さんたちもほぼ全員出るので、安心したような、それでも不安なような。

なにしろもう20年近く前の映画だ。昔、アン・ハサウェイ自身は「続編はないし、仮に作るとしても、若い世代に譲って作った方がいい」と言ってたんだが、さてどうなることやら。


Emily Blunt as Emily Charlton - "The Devil Wears Prada" David Frankel, Bs: Lauren Weisberger, US 2006

Emily Blunt as Emily Charlton (L).
"The Devil Wears Prada" David Frankel
20th Century Fox
 
ちなみにオレは断然、エミリー派。なので実は、彼女側の視点から構成したスピンオフを作るってんならちょっと観たいかな、とは思っていた。

ただし、前作で一番の問題点は、パリ行きを巡る競争からエミリーが脱落したあのアクシデントの流れにあると思う。自分の目上やライバルがあんな偶然で脱落してくれるなら誰も会社で苦労はしない。これをほとんど放置して話を進めたもんだから、お花畑映画と批判する層が一定数いるのも理解できる。

でもまあ、そこをあんまりシビアにツッコミすぎても、それはそれで話が重くなりすぎて映画全体の雰囲気を壊してしまうので難しいところではあると思うが。


Stanley Tucci as Nigel Kipling (R).
"The Devil Wears Prada" David Frankel
20th Century Fox
 
そして、編集者のナイジェルがその後どんな人生を送っているのか、これは気になる。

編集部だって組織だ。少なくとも映画の中で、組織的に一番ワリに合わない目に遭わされたのは彼なんじゃないだろうか。脇役なのでそのあたりの描写は流していたが、あんな結果には誰だってマジで落ち込むだろ。もしアンディが昇格してるのであれば、彼にはお世話になったんだし、ちゃんと引き立ててあげて欲しいものだ。

でも、あれだけ有能なアート・ディレクターだったらヘッドハンティングもあるだろうし、退社して独立してるストーリーもあるかもしれない。

現時点で続編の公開は来年5月ごろの予定である。


Her office is on the 25th floor of One World Trade Center. - "Meryl Streep Meets Anna Wintour at Vogue" Vincent Peone, Vogue, US 2017

"Meryl Streep Meets Anna Wintour at Vogue" Vincent Peone
Vogue


②新007シリーズがドゥニ・ヴィルヌーヴ監督で正式に決定

やっと、ついに、決まった。

Amazon MGM側もフレミング側も認めたので、もう余程のことがないかぎり降板はないだろう。好きな監督だし、期待したい。

ただし、ヴィルヌーヴ監督は作風が基本「引き算」だ。あらゆるエンタメ要素がテンコ盛りな007シリーズに彼の作風がマッチするかどうか。クレイグ版ボンドでそれなりに削ってはきたが、果たしてこれ以上の引き算が世間に受け入れられるのかどうかは未知数だ。

おそらく制作側は、映画「DUNE」で複雑怪奇な原作をあれだけ簡潔にまとめてなお且つ破綻しなかった力量があるんだから大丈夫!と思ったんだろう。いずれにしてもまだ「DUNE 3」を撮ってる最中なので、実際の公開は早くて2年後くらいだろうか。

だとすると年内には、最後に残った最高に難しいハードルをクリアしなければならない。


Canadian filmmaker Denis Villeneuve to direct next James Bond film - CTV News, Canada 2025

CTV News
CTV Television Network


どーする監督。かつて、原作も読んでいた亡きダイアナ妃が「私がイメージするボンド像に最も近い」と言ったのは、4代目のダルトン版ボンドだった。オレはこれ、ポリコレだなんだで今や誰も表立っては言わないが、結構イギリス人の多数派の本音なんじゃないかと思ってる。今回、そのイギリス人は同じ王冠を頂くカナダ人が監督に就任したんだから、多少は溜飲を下げてくれたと思いたい。

でも、ボンドのキャスティングは監督を選ぶ以上に大博打だ。クレイグ版ボンドだって選ばれた当時は叩かれたのなんのって。それはもう凄かったんだから。それが今やどうだ。まあ、アジア人が口を挟む余地はないけれども、こればっかりは映画館のスクリーンで上映してみないと解らん。

まあ実際に仕事で決めろって言われたら、選ぶ方も選ばれる方も胃が痛くなる話だよなあ。


CTV News
CTV Television Network


③M3GAN 2.0が大ゴケ

あーあ、そーなるんじゃないかとオジサンは心配してましたよ。

なぜか。それはな、2.0のミーガンちゃん、なぜかあまり可愛くないのである。なぜだ! アンドロイドだからさ。いや違うだろ、同じ制作陣が作ったんだぞ。間違いなく前作と同じミーガンちゃんなのに、なぜか、なんか可愛くなくなっちゃった?のである。

大ゴケした理由はいろいろあるだろうけど、なぜかミーガンちゃんがあまり可愛くない、これが一番のコケた理由だと思う。


Final Trailer - "M3GAN 2.0" Gerard Johnstone, St: Chris Bacon, US 2025

M3GAN = Model 3 Generative Android
"M3GAN 2.0" Gerard Johnstone
Blumhouse Productions / Atomic Monster / Universal Pictures


もうひとつの理由として、2.0は軍用アンドロイドがライバルとして新登場すること。

新登場はいいんだけどさ。闘うことが前提になったから、いかにもハリウッドなバトルシーンで多用される、むちゃくちゃ陰影が強い照明ばかりが目立つ印象だ。

これ、前作を観た人は思い出してほしいけど、とにかく予算がなくて、素人目にもちょっとビックリするくらい自然光だけか、ちょっと補助的に照明を入れるだけで撮ってるシーンが多かったのだ。もちろんクライマックスではそれなりに照明を組んだ空間で撮ってるが、そういう見た目の対比も含めて前作はもっと日常と非日常のバランスが取れていたような気がする。

作り手が想像する以上に、観客は敏感に感じ取ってる。非日常はクリエイター次第だけど、日常は違う。ケイディちゃんは人間の女の子で、ミーガンちゃんは機械だけど中身は人間の女の子が演じていたし、実際に二人はこの映画がきっかけで友達になって、アリソンお姉さんとも家族のような付き合いになった。前作はそういう二人の微笑ましい日常が自然光の中でよく撮れていたし、それらのシーンが予算不足のホラーなシーンをも助けてくれていた。

予算が増えればクリエイターがやりたいことが増えるのは百も承知で、今作はトレーラーを観るかぎり非日常に偏りすぎなような気がして、心配してたんだよ。


AMELIA = Autonomous Military Engagement Logistics and Infiltration Android
"M3GAN 2.0" Gerard Johnstone
Blumhouse Productions / Atomic Monster / Universal Pictures

もっと言うなら、この新登場の強敵アメリアちゃん、多分、役割が「闘う」ことしかない。軍用アンドロイドだから当たり前? いや、それじゃダメだなんだってば。

前作も今作も、お手軽なジャンクフード感覚でオーケー、AIアンドロイドの暴走や闘いをポップコーン片手に楽しむホラー映画ではあるよ。

だけど、前作は闘う理由として、今時の社会不安がエッセンスとしてバランスよく取り入れられていた。セラピストがジェマに語る問題点は多くの大人に刺さる言葉だったし、だから、子供や人形との接点が多いであろう普通の女性たちにも受け入れられたんだと思う。

例えばさ、不登校でも何でもスマホが手放せない今の世の中って、このままでいいんだろうか?

いいとして、じゃあ、子供たちはこれからどんな風に成長していくんだろうか? そしてもし、今以上にスマホそれ自体がもっと積極的に、もっと強制的にオレたちに関わってこようとするなら、どうなるんだろうか?

今観るとトレーラーの時点で明白だ。前作は、もちろん説教臭くなるからストレートには言わないし、エンタメだから真面目な解決方法が提示されるワケでもないけれど、少なくとも「日常に潜むちょっとした今時の不安」が表現されている。

多くの観客が今作にも期待したのは、強敵が現れてどうしようとか、ガチンコで勝てるのかとか、そういう不安じゃなかったんだよ。そんなのは未だにドンパチやるしか売る方法がないガンダムみたいなアニメに任せとけばいい。

イケメンもイクメンも出てこなかった前作が「なぜ女性たちにも大ウケしたホラー映画になったのか」というポイントは忘れないでほしかったなあ。


Violet McGraw as Cady, and Allison Williams as Gemma.
"M3GAN 2.0" Gerard Johnstone
Blumhouse Productions / Atomic Monster / Universal Pictures

ま、前作を観たのは偶然だけど、これも何かの縁だ。

アマプラで無料になったら2.0もちゃんと観て、今は3.0の可能性に期待しておこう。

それにしてもホント~に不思議だ、なぜかやっぱし、ミーガンちゃんの造形自体は前作の方が可愛い気がする。

前作のミーガンちゃんにだったら殺されてもいいかな、と思ったけど、今作2.0のミーガンちゃんには殺されたくないなあ。

オジサンはそう思いましたね、はい。


Official Trailer - "M3GAN" Gerard Johnstone, St: Anthony Willis, US 2022

Violet McGraw as Cady, and Allison Williams as Gemma.
"M3GAN" Gerard Johnstone
Blumhouse Productions / Atomic Monster / Universal Pictures


おやすみなさい。