何年か前に勤めていた会社でのお話。
同僚で同世代の女性が、禁煙を宣言した。
そこへ至る理由は伏せておくとして、どうやら本気らしい。
証拠に、わざわざ有休を使って禁煙外来を受診する日も決めたという。
果たして有休後、喫煙所に彼女がやってきた。
喫煙歴二十数年という彼女の話には驚くしかなかった。
なんと今迄、ずっと「空ぶかし」であったことが診断で判明したというのだ。
吸い込んだ煙は口腔までで、肺には全く入っていなかった、というのである。
その証拠に、肺は非喫煙者同様に綺麗だったそうである。
つまり、ニコチンなどを慢性的に摂取しようとする薬物依存ではない。
喫煙という行為自体への依存、これをプロセス依存というらしいが、ギャンブル依存と同じ扱いだと言うのだ。
目を丸くして聞くしかない自分を尻目に、彼女は「最後のお付き合い」と言って火を点けた。
彼女は「精神科の方がいいのかなあ」と呟くと、空ぶかしの煙を薫らせた。
Baby - Bishop Briggs Illustrator Anja Slibar (US) & Seed Animation Studio (UK) Island Records |
禁煙は続けられているだろうか。