偶然にも気になる箇所があったので、新藤通弘の「革命のベネズエラ紀行」という本から引用させて頂く。※
※ ( )部分は当ブログ.
・・・ベネズエラという国名で想像されることは、もちろん関心によって、そしてそれも世代によって異なるであろう。しかし、1960年代に西田佐知子さんが歌って流行った「コーヒー・ルンバ」(Coffee Rumba)という軽快な名曲を知っている人はいても、この曲がベネズエラの曲と知っている人は少ないであろう。
(中略)
この原曲の歌詞は「アラブのコーヒー」とも「お坊さん」ともまったく関係ない。よく誤解されていることだが、そもそもイスラムには牧師も僧も存在しない。作詞者の中沢清二さんの歌詞には、ベネズエラという言葉もひとこともでてこない。また曲は正確にはルンバではなく、ルンバに似たベネズエラのリズム、オルキディアというリズムである。中沢さんの驚異的な創作力には、ただただ脱帽するしかない。
ところが原曲は「コーヒーを挽きながら」(Moliendo Café)というベネズエラ人のホセ・マンソ・ペローニの作詞作曲で、しかも哀愁に満ちた曲なのである・・・
以上、この箇所について少し調べて書き留めておくことにした。
ベネズエラ(ベネズエラ・ボリバル共和国)は南米大陸の北端にある。
隣接するコロンビアやガイアナなどと共に、珈琲の名産地として名高いエリアだ。
そして、珈琲農園の労働者たちの歴史を辿ると奴隷貿易に辿り着くが、これについては触れないでおく。
原曲の歌詞はスペイン語で下記の通り、意訳ではあるが翻訳してみた。
Cuando la tarde languidece renacen las sombras
午後の日差しが落ちて影が蘇り
y en la quietud los cafetales vuelven a sentir
静けさに満ちた珈琲農園に漂う
esta triste canción de amor de la vieja molienda
寂しい恋の歌のような古い挽き臼の音が
que en el letargo de la noche parece decir ...
夜のまどろみに語り聞かせる・・・
Una pena de amor una tristeza
悲しき愛の痛み
lleva el zambo Manuel en su amargura
異国の男が胸に抱く悲しみ
pasa incansable la noche moliendo café ...
珈琲を挽きながら夜は更けていく・・・
歌なので、あくまでも大まかに意訳した方が主旨が通じやすいと思うものの、一箇所だけ補足しておく。
サビにある「zambo Manuel」は「異国の男」とした。
正確には「zambo」は「黒人」に対する蔑称で、「Manuel」は日本語なら「太郎」のような男性名詞である。
作詞された1950年代の時点でペローニに悪意はなく、常用語と化した卑語なのだろうと思われる。
差別用語どうこうではなく、中沢が「楽しいルンバのリズム」とインスピレーションされた点に留意したい。
&
Moliendo Café - Hugo Blanco Peerless Records |
1958年、当時17歳だったミュージシャンのウーゴ・ブランコが手持ちのギターのために作曲。
アルパ奏者であった叔父のホセ・マンソ・ペローニがアレンジなどを担当、後に歌詞が付け加えられた。
南米で流行して知られるようになった後、世界的に大流行し、1960年代には各国でカバー曲が発売される。
1970年代にはフリオ・イグレシアス(んナタリ~♪ですね)がカバーし、再び世界的に注目されるようになった。
日本では西田佐知子、ザ・ピーナッツ、森山加代子、後に荻野目洋子や工藤静香などもカバーしている。
むかしアラブの偉いお坊さんが
恋を忘れた哀れな男に
しびれるような香りいっぱいの
琥珀色した飲みものを教えてあげました
やがて心うきうき
とっても不思議このムード
たちまち男は若い娘に恋をした
コンガ マラカス
楽しいルンバのリズム
南の国の情熱のアロマ
それは素敵な飲みもの
コーヒー モカマタリ
みんな陽気に飲んで踊ろう
愛のコーヒー・ルンバ
&
Desire Blues / Coffee Rumba - Sachiko Nishida Polydor Records |
今日もインスタントだけど、いつもよりはアロマが香る、ような気がする。