理解


ウディは、まあ、いろいろありすぎる人だ。

いろいろありすぎて、#MeToo運動の時にもあることないこと散々に掘り返されていた。
歳の差があって何が悪い、後悔することなんかしてない、と公言する人間は間もなく絶滅するだろうけど。
ただ、そのいろいろあった当時から現在に至るまで、どんなに批判されても公私を助けたのがダイアンだった。

ダイアンにだけは頭が上がらないだろう。

Linda Christie (Diane Keaton) :
 If you could have any painting, what would you pick?
リンダ・クリスティ (ダイアン・キートン)
 もし絵が手に入るなら、誰の作品を選ぶ?

Allan Felix (Woody Allen) :
 Uh... van Gogh.
 Any van Gogh.
アラン・フェリックス (ウディ・アレン)
 んー、ゴッホかな。
 ゴッホだったら何でも。

Linda :
 Me too.
 I feel some sort of a mystical attraction for Van Gogh.
 Why is that?
リンダ:
 わたしも。
 ゴッホにはある種の神秘的な魅力を感じるの。
 なぜかしら?

Allan :
 I don't know.
 I just know he was a great painter and he cut off an ear for a girl that he loved.
アラン:
 わかんないね。
 凄い画家だってことと、愛する女の子のために自分の耳を切り落としたっていうのは知ってるけど。
※こらこら、厳密には・・・
耳を切り取った直接の原因は、ゴーギャンとデッサンについて口論となったため.
そして、その耳を当時夢中になっていたアルルの娼婦に贈った、と言われている.
Linda :
 That's the kind of thing you'd do for a girl.
リンダ:
 それってあなたがやりそうなことよね。

Allan :
 Ha-ha, I'd have to like her a lot.
アラン:
 はは、その子をよっぽど好きじゃないとね。

Linda :
 I wonder if Dick would cut his ear off for me?
リンダ:
 ディックはわたしのために耳を切り落としてくれるかなあ?
※ディック・クリスティ(トニー・ロバーツ)、リンダの夫.
Allan :
 I don't think you should ask him.
 He's very busy lately.
アラン:
 そんなことを聞いちゃだめだ。
 彼は最近忙しいんだし。

Linda :
 It must be fantastic to be loved so intensely...
リンダ:
 強く愛されるって素晴らしいんでしょうね・・・

Allan :
 Why don't we split and see, if there's any action at the Berkeley Museum?
アラン:
 別れて観ようか、バークレー美術館なら他に何かやってるかも?
※現BAM/PFA(バークレー美術館およびパシフィック・フィルム・アーカイブ).
Linda :
 Okay.
リンダ:
 いいわよ。

Allan :
 Ridiculous...
アラン:
 バカバカしくって・・・

Linda :
 Hey, hey!
 Allan, There's one!
リンダ:
 ねえねえ!
 アラン、いたわよ!

Allan :
 She's great.
アラン:
 美人だな。

Linda :
 Go ahead, speak to her.
リンダ:
 話しかけてみなさいよ。

Allan :
 No-no.
 Are you kidding?
アラン
 無理無理。
 冗談だろ?

Linda :
 No, no-no, go on, give it a try.
 Come on.
リンダ:
 ダメ、ダメダメ、やってみなきゃ。
 頑張って。

Allan :
 No...
アラン:
 無理だって・・・

Linda :
 That's what we're here for.
 Go on.
リンダ:
 そのために来たんだから。
 やんなきゃ。

Allan :
 Casual, casual...
 ...That's quite a lovely Jackson Pollock, isn't it?
アラン:
 気軽に、気軽に・・・
 ・・・ジャクソン・ポロックって凄くいいよね?
※親父が超~尊敬してたので、ポロックの絵は複雑な心境になる(笑).
Girl (Diana Davila) :
 Yes, it is.
女の子 (ダイアナ・ダビラ)
 ええ、そうね。

Allan :
 What does it say to you?
アラン:
 何が描かれてるのかな?

Girl :
 It restates the negativeness of the universe, The hideous lonely emptiness of existence, Nothingness, The predicament of Man forced to live in a barren, Godless eternity like a tiny flame flickering in an immense void with nothing but waste, horror and degradation, forming a useless bleak straitjacket in a black absurd cosmos.
女の子:
 宇宙が無意味であることを再構成し、存在の恐ろしい孤独さ、虚無感、神なき不毛の地で徒労と恐怖に襲われ、不条理な宇宙に縛られながら、無駄なあがきと知りつつもただ漠然と風前の灯火のごとく生きることしかできない哀れな人間。
 
Allan :
 ... What are you doing Saturday night?
アラン:
 ・・・土曜の夜、なにしてる?

Girl :
 Committing suicide.
女の子:
 自殺の予定。

Allan :
 What about Friday night?
アラン:
 金曜の夜は?

Girl :
 ......
女の子:
 ・・・・・・

"Play It Again, Sam" Herbert Ross
APJAC Productions / Paramount Pictures

Gil Pender (Owen Wilson) :
 It's... It sounds so crazy when I say it and you'll think I'm drunk.
 But I've got to tell someone I'm from a different time, a whole other era, the future... and I pass from the two thousandth millennium to here.
 A car picks me up, I slide through time...

ギル・ペンダー (オーウェン・ウィルソン)
 これは・・・これは、酔っぱらいの戯言で狂ってるように聞こえるかもしれません。
 でも、ボクは伝えておきたいことが、別の時代から来て、まったく違う世界から、未来です・・・2000年代からここへ来たんです。
 車に拾われて、時間がズレて・・・

Man Ray (Tom Cordier) :
 Exactly correct.
 You inhabit two worlds.
 So far, I see nothing strange.

マン・レイ (トム・コルディエ)
 その通り。
 キミは二つの世界に存在してるんだ。
 なるほど、奇妙でも何でもない。


"Midnight in Paris" Woody Allen
Gravier Productions / Sony Pictures Classics

さっすが、シュルレアリスト。

なお、主人公ギルの正面に座ってるのは、会話が破綻してるサルバドール・ダリ(エイドリアン・ブロディ)。
左隣に座ってるのがルイス・ブニュエル(アドリアン・ドゥ・ヴァン)、みんなダリの友人たち。
異なる時代の女を愛してしまった悩み相談に、レイは「写真だな」、ブニュエルは「いや映画だろ」。

たはは、そう、こういう人たちって、自分の中で合点がいけば万事OKなんだよね。

周りは大変だけど。